アナログ信号にフィルタを作用させて周波数選択を行う場合,演算増幅器などを用いてアナログ信号のままで行うこともできるが,アナログ信号を量子化した後,ディジタル演算により行うこともできる。
一般にアナログフィルタに対してディジタルフィルタは,特性が安定していること,特性を容易に変化させられることなどの利点があるものの,ハードウェアが複雑になることやリアルタイム応答性の点で不利となる。
ディジタルフィルタには,巡回形と非巡回形のフィルタがあり,前者を IIR(無限インパルス応答,Infinite Impulse Response) フィルタ,後者を FIR(有限インパルス応答,Finite Impluse Response) フィルタという。
巡回形フィルタは非巡回形フィルタに比べ,低い次数で鋭い周波数特性を得られるが,安定性に留意する必要がある。
一方,非巡回形フィルタは常に安定であり,多項式係数に対象性をもたせることで線形位相特性として,ひずみの少ない出力波形を得ることができる。
しかし,鋭い周波数特性を得るためには高い次数が必要となり,遅延時間が大きくなる。
また,周波数特性が急激に変化するカットオフ周波数近辺で大きな誤差を生じるギブス現象が知られており,この現象を抑制するために窓関数を用いることがある。
窓関数にはハミング窓やハニング窓があるほか,パラメータによりユーザが効果を指定できるカイザー窓などがある。
ディジタルフィルタ演算を実行するプロセッサとして積和演算機能やメモリ構成などを専用に強化した DSP(digital signal processor) があり,各種信号処理に用いられている。
参考文献
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- 2022年7月14日 新規作成