目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

計算機システムの信頼性

コンピュータシステムは期待された性能を安定に発揮することを求められており,その基準となる信頼性,可用性,保守容易性を RAS と称している。

近年では,データを破壊から守る保全性や部外者のアクセスを制限する機密性も加えた RASIS と呼ばれる場合もある。

高い信頼性が求められる計算機システムでは,障害が起こりにくいように,また,障害が発生した際には,柔軟に対応できるように,信頼性向上対策としていくつかのシステム構成が考えられる。

システムの構成方法

デュプレックスシステムやデュアルシステムなどは,計算機システムの一部に故障が生じても,システムを停止させないで正常に続行できるフェールソフト(fail-soft)*1に分類される代表的なシステムの構成方法である。

一方,シンプレックスシステムは,冗長化などを行わないシステム構成である。

デュプレックスシステム(duplex system)

デュプレックスシステムとは,機器やシステムの信頼性を高める手法の一つで,同じシステムを二系統用意して,普段は片方を稼働させ,もう片方は待機させておく方式。

アクティブ/スタンバイ構成とも呼ばれる。

デュアルシステム(dual sysytem)

デュアルシステムとは,機器やシステムの信頼性を高める手法の一つで,同じシステムを二系統用意して,常に両者で同じ処理を行う方式。

処理結果を相互に照合・比較することによりより高い信頼性を得ることができる。

シンプレックスシステム(simplex system)

シンプレックスシステムとは,情報システムの信頼性や構成法に関する用語で,冗長化などを行わず単一の系統だけでシステムを動作させること。

最も単純な構成で,どこかに障害が発生するとシステム全体が停止してしまう。

システムの信頼性

システムの信頼性(reliability)を表す指標の一つとして,稼働率が用いられ,これは平均故障間動作時間と平均修復時間の両者によって表される。

あるユニットの稼働率の値が $\alpha$ であるとすれば,このユニットを二つ使用してシステムを構成したとき,システム全体の指標は,ユニットを直列に構成した場合には $\alpha^2$ で表され,ユニットを並列に構成した場合には $1 - (1 - \alpha)^2$ で表される。

図 直列に構成したユニット

図 直列に構成したユニット

図 並列に構成したユニット

図 並列に構成したユニット

可用性を表す稼働率

信頼性は,平均故障間隔MTBF)で表され,保守容易性は,平均修理時間MTTR)で表される。

これらの指標を用いて,可用性を表す稼働率は,$\displaystyle \frac{\text{MTBF}}{\text{MTBF}+\text{MTTR}}$ 式で求められる。

今,ある装置 X を 5 年間連続して稼働させたところ,故障は 2 回で修理の合計時間は 1 200 h であった。

1 年間を 8 760 h とすると,この装置 X の稼働率は 97.3 % である。

次に装置 Y を装置 X に直列に接続して用いることを考える。

このままでは装置単独で用いるよりも信頼性が低下する。

よって,フォールトトレランスに基づく設計を適用し,予備機を待機させ,障害発生時にはこの待機系に切り替えて運用できる図示のシステム Z を構築することにした。

図 システム Z

図 システム Z

このシステムをデュプレックスシステムという。

この装置の信頼度を稼働状態と待機状態との区別なく,装置 X は 0.7,装置 Y は 0.8 とするとき,待機系への切り替え時に生じる故障や停止を無視すると,システム Z の信頼度は 0.806 に改善される。

参考文献

更新履歴

  • 2022年3月7日 新規作成
  • 2022年3月8日 図「直列に構成したユニット」「並列に構成したユニット」を追加
  • 2022年8月28日 参考文献に「令和4年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問7」を追加

*1:故障状態にあるか,又は故障が差し迫る場合に,その影響を受ける機能を,優先順位を付けて徐々に終了することができるシステムの性質。