目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

中・小規模の電力貯蔵装置

電力系統の負荷平準化のため,以前より揚水発電が用いられている。

近年では負荷平準化だけでなく,電力品質の向上や自然エネルギー発電の変動吸収等を目的として,中・小規模の電力貯蔵装置が注目されている。

電池電力貯蔵

電池電力貯蔵の動作原理

交流電力エネルギーを直流に変換して,化学エネルギーとして貯蔵する。

蓄えられたエネルギーは直流電力として出力されるため,交流電力に変換して系統に供給する。

例としては,鉛電池,ナトリウム-イオン電池(NaS)電池,リチウムイオン電池などがある。

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電池電力貯蔵の特徴

  • 電池の容量当たりのエネルギー密度が高く,小型化しやすい。
  • 交流-直流変換器や一部の電池は既存技術であり,実現しやすい。
  • 設置場所の制約が少なく,設置に要する期間が短い。
  • 電池によっては,温度管理,電解液管理などの保守が必要がある。
  • 電池には寿命がある。

フライホイール電力貯蔵

フライホール電力貯蔵の動作原理

交流電力エネルギーでフライホイールを回し,回転エネルギーとして貯蔵する。

エネルギー貯蔵量の変化に伴いフライホイールの回転数が変化するため,周波数変換器を用いてエネルギー授受を行う。

フライホール電力貯蔵の特徴

  • 容積当たりのエネルギー密度が高く,小型化しやすい。
  • 機械的な制約などから貯蔵容量は中容量以下となる。
  • 軸受けの低損失化のため,超電導磁気軸受が開発されている。

超電導エネルギー貯蔵(SMES)

超電導エネルギー貯蔵の動作原理

交流電力エネルギーを直流に変換し,超電導コイルの磁気エネルギーの形で貯蔵する。

超電導エネルギー貯蔵の特徴

  • 超電導コイルを用いるため,コイルでの損失は零となる。
  • 応答速度が速い。
  • 冷却のための冷凍機と交直変換器の損失が全体の損失となる。
  • 冷凍機の電力などが必要なため,高効率化のためには大容量の装置が必要となる。
  • 装置の容積当たりの貯蔵エネルギー密度は大きい。

キャパシタ貯蔵

キャパシタ貯蔵の動作原理

交流電力エネルギーを直流に変換し,電解コンデンサ,電気 2 重層キャパシタ等の大容量キャパシタに静電エネルギーとして貯蔵する。

キャパシタ貯蔵の特徴

  • 応答速度が速く,容積の割に取り扱える電力が大きい。
  • 容積当たりのエネルギー密度は他の方式に比べ小さく,エネルギー貯蔵量は小さめである。
  • キャパシタはエネルギーの授受で端子電圧が大きく変動するため,交直変換器に工夫が必要である。
  • 短周期の負荷変動や発電量の変動吸収に適する。
  • 蓄電池に比べサイクル寿命が長い。

圧縮空気貯蔵(CAES)

圧縮空気貯蔵の動作原理

交流電力エネルギーで 3 ~ 6 [MPa] の圧縮空気を貯蔵し,その圧縮空気をガスタービンに供給し,電力を発生させる。

圧縮空気貯蔵の特徴

  • 圧縮ガスのエネルギー密度はさほど大きくない。
  • 貯蔵場所に地下空洞などを用い,大容量化が可能である。
  • 電力に変換するときは,ガスタービンLNG などの燃料が必要なため,純粋な電力貯蔵とは異なる。

参考文献

  • 平成21年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問4「中・小規模の電力貯蔵装置」

更新履歴

  • 2022年10月29日 新規作成