アナログ信号をコンピュータで利用するには,アナログ-ディジタル変換(analog-to-digital conversion,略して A-D 変換)によりディジタル信号に変換する必要がある。
連続したアナログ信号を適当な時間間隔で区切り,断続的な信号とすることを標本化という。
標本化定理によると,入力信号を完全に復元するためには,その入力信号に含まれる最高周波数成分の 2 倍を超えたサンプリングレートとすればよい。
標本化されたアナログ値を飛び飛びの不連続な数値で表すことを量子化という。量子化の段階数が増え,量子化の単位が小さくなるほど,量子化誤差は小さくなる。
A-D 変換器の方式
積分形
A-D 変換器には主に次のような方式がある。
積分形には,入力信号を一定時間積分し,この積分結果と一定の基準信号を積分した値が等しくなる時間を計測し,この計測値から変換結果を得る方式がある。
サンプリングレートは低いが,高精度でノイズに強い方式である。
逐次比較形
逐次比較形には,入力信号と内部の D-A 変換器の出力を 2 分探索で比較していき,ディジタル値に変換する方式がある。n ビットの変換には,MSB 側から n 回の比較が必要なため,中程度のサンプリングレートとなる。
変換精度を得るために,サンプリングホールド回路により,標本化される信号レベルが変換終了まで変動しないようにする場合がある。
並列形
並列形はフラッシュ形とも称され,n ビットの変換には (2n - 1) 個の基準電圧と比較器を準備し,入力信号をそれらで同時に比較して変換する方式がある。
高いサンプリングレートを得られるが,回路規模は大きくなる。
ディジタル制御システムの入出力処理
マイクロプロセッサを用いたディジタル制御システムは,目覚しく発展している。
このようなディジタル制御においては,時間軸方向と振幅方向の成分を持つアナログ信号を,ある一定の離散時間間隔で取り出す標本化と,ビット列に数値化する量子化によってディジタル信号に変換する。
この際,サンプリング定理で定まるナイキスト周波数よりも低い周波数帯域に,アナログ信号を限定する必要がある。
アナログ信号にナイキスト周波数以上の周波数が含まれると,本来存在しない低周波数の信号としてディジタル信号に雑音がのることになる。
これを折り返し現象という。この現象を防ぐには,あらかじめ低域通過フィルタを用いて,アナログ信号の周波数帯域を制限すればよい。
参考文献
更新履歴
- 2022年1月15日 新規作成
- 2022年2月11日 参考文献に「平成18年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問6」を追加