風力発電の発電機は,風速の変動で軸の回転速度が変化し,端子電圧の周波数,電圧が変動するため,系統に連系するにはこれを解決する必要がある。
このため,周波数に関係なく,電圧調整も容易な直流発電機(direct current generator)*1が用いられたこともあったが,保守性と経済性の問題から,現在はあまり使われていない。
現在主に使われているものは,同期発電機(synchronous generator)*2と誘導発電機(induction generator)*3である。
原動機となる風車は風速によって回転数が変化するので,風車のエネルギーを効率良く電気エネルギーに変換するためには,回転数変化に対する発電機側での制御が必要となる。
同期発電機
同期発電機は界磁により端子電圧を確立でき,力率の調整も可能である長所を持つが,構造が若干複雑で,軸の回転速度は直接系統と接続する場合,系統の周波数に依存する。
このため,主に出力電圧を直流化したのち,交直変換器で系統の周波数と一致させる方法が採られる。
増速歯車を使用しない風車発電用発電機
増速歯車を使用しない風力発電では同期発電機が使用されるが,風車の回転数に応じて,励磁電流の制御が行われる。
基本的に非同期運転となるため,商用電力系統との並列運転と潮流制御はインバータで行われる。
誘導発電機
誘導発電機は構造が簡単で,軸の回転速度が系統の周波数に依存しないため,直接系統と接続可能であるが,端子電圧を単体で確立できないため自立運転が困難であり,力率の調整能力も無い。
三相かご形誘導発電機
三相かご形誘導発電機は,外部の励磁装置を必要とせず構造が簡単で安価なため,増速歯車を有する風車発電設備に多く採用されている。
通常,風速変化に伴う風車の定回転数制御は,風車のピッチ制御により行われる。
この方式では,回転数の変化によって滑りが変化しエネルギー変換効率も変化するので,大幅な回転数変化に対しては,極数切換による同期速度の変更を行う。
三相巻線形誘導発電機
三相巻線形誘導発電機を用いる場合は,風車羽根のピッチ制御を行うとともに,回転子の二次誘起起電圧に同期した適切な大きさ及び位相の電圧を外部から加える二次励磁方式が採用されている。
この方式では,外部から印加する励磁周波数と電圧を制御することによって,滑りを適切な値に保ちながら風車の回転数変化に合わせて同期速度への対応を行うことができ,力率の制御もできる。
二重給電誘導発電機
最近の大形風力発電機では両者の長所を併せ持ち,運転上可変速性能に優れる二重給電誘導発電機が主に用いられる。
誘導機の二次励磁方式
風力発電には,誘導発電機が用いられることがある。
かご形の誘導発電機を用いた方式はブラシが必要なく,構造が単純であるが,風車の回転速度を商用系統の周波数 $f_1$ に対応した速度にする必要がある。
一方,巻線形誘導発電機を用いれば,二次抵抗を外部から制御することにより滑り $s$ を調節して同期速度の 100 ~ 110 % 程度の範囲で回転速度が可変可能である。
しかし,これらの方式では,いずれも系統への併入時の突入電流を制限するソフトスタート装置が一般に用いられる。
巻線形誘導機の二次側をインバータにより滑り周波数の交流で励磁すれば,更に広い範囲での回転速度の範囲で発電が可能である。これを二次励磁方式という。
今,誘導機において,一次側から二次側に電磁誘導によって供給される電力(同期ワット)を $P_2$ とする。
このときの二次銅損は一般に $sP_2$ で表される。しかし,二次励磁方式を用いる場合,$sP_2$ として表される電力の大半がインバータから供給される。
二次励磁方式の発電機として動作している場合を損失を無視して考える。
回転子角速度 $\omega_2$ が電源角周波数 $\omega_1$ より大きい場合,インバータは滑りによる電力分を吸収することになり,滑りは $s \lt 0$ となる。
このとき,双方向電力変換可能なインバータであれば電力を電源に返還することになり,誘導機は電源に周波数 $f_1$ の同期ワット $P_2$ の電力を供給することになる。
一方,滑りが $s \gt 0$ であっても,風車による機械的な動力 $(1-s)P_2$ とインバータの電力の和が電源に供給される。
(補足)同期機と誘導機の違い
同期機(synchronous machine)とは,定常運転状態において,機械の回転速度と,誘導起電力の周波数の比が一定である交流機である。
誘導機(induction machine)とは,固定子および回転子がたがいに独立した電機子巻線を有し,一方の巻線が他方の巻線から電磁誘導作用によってエネルギーを受けて動作する非同期機である。
参考文献
- 電気専門用語集(WEB 版)
- 令和5年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問5「誘導機の二次励磁方式」
- 平成23年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問6
- 平成18年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問1「風力発電用発電機」
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