従来,使用されてきた誘導形電力量計は,電力の使用量に応じて機械的に動く円盤が内蔵されている。
そのため,逆潮流があると電力の使用量の正確な計測ができないことから,太陽光発電設備を有する需要家には逆回転防止装置付き誘導形電力量計が 2 台設置されていた。
現在は,デジタルで計測する電力量計の機能により,逆潮流電力量も測定が可能となっている。
その機能に加え,回路の開閉機能,双方向の通信機能,アンペアブレーカの機能(一部の地域は未実装)が付与されたスマートメータ (Smart Meter) が展開されている。
さらに,通信機能の搭載により,検針の自動化が図れるとともに,これまで電力量計で行っていた時間帯別電力量の仕分けを 30 分ごとの計測値を用い MDMS (Meter Data Management System) で行うことが可能となった。
これにより,多様な料金メニューの実現が可能となった。
電力デジタル革命キーワード 250
西村 陽・巽 直樹による『まるわかり 電力デジタル革命キーワード 250』において,スマートメータは次のように説明されている。
スマートメータとは,検針・料金徴収業務に必要な双方向通信機能や,遠隔開閉機能を有した電子式メータのことで,使用者の 30 分ごとの使用電力量の計測や,宅内向けの通信機能を有している。使用電力量などのデータを発信するルートは 3 つあり,それぞれ「A ルート」,「B ルート」,「C ルート」と呼ばれている。
A ルート
スマートメータで計測した使用電力量のデータなどを送配電事業者へ送るルート
B ルート
スマートメータで計測した使用電力量データなどをリアルタイムで需要家へ送るルートで,EMS (Energy Management System) によって使用電力量や電気料金などの「見える化」,機器の制御などを行うことができる。
C ルート
使用電力量データなどをスマートメータから直接または送配電事業者を経由して小売電気事業者やその他の民間事業者など第三者に送るルートで,これによって得られたデータを活用し,需要家への多様なサービスの提供が検討されている。日本ではまだ利用されていない。
グリッドで理解する電力システム
東京電力パワーグリッド株式会社 取締役副社長 岡本 浩 著『グリッドで理解する電力システム』において,スマートメータは次のように説明されている。
通信・制御機能を備えた電子式電力量計。検針業務の自動化,電力の遠隔制御などが可能になるほか,30 分ごとの使用電力量計測が可能になるため,計量データを活用した新ビジネス・新サービスが登場しつつある。2024 年度までに全国すべての世帯・事業所で設置される予定。さらにリアルタイムでの計量や,個人の電力データ活用に向けた検討が進められているところ。欧米諸国でもビジネス活用に向けた動きが活発化しているが,メーターの普及率は,実は日本が最も進んでいる。
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参考文献
- 西村 陽・巽 直樹,『まるわかり 電力デジタル革命キーワード 250』,日本電気協会新聞部,2018年8月8日
- 岡本 浩,『グリッドで理解する電力システム』,日本電気協会新聞部,2020年12月9日
- 令和5年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問4「スマートメータ」
更新履歴
- 2023年8月28日 新規作成
- 2023年8月29日 参考文献に『まるわかり 電力デジタル革命キーワード 250』,『グリッドで理解する電力システム』を追加