二重給電交流機(Doubly Fed Machine)は,固定子(一次巻線)と回転子(二次巻線)の 2 箇所において電力系統に連系される回転機となる。
構造は基本的に巻線型誘導機と同じとなり,回転子はスリップリングを介して電力系統に接続される。
二重給電交流機の電気機器への代表的な適用例としては,風力発電機,可変速揚水発電機があげられ,それら機器の速度制御は,一般的に回転子(二次巻線)を通じた二次励磁制御方式が採用される。
二重給電誘導機
二重給電誘導機(Doubly-fed Induction Machine)は一次巻線が商用周波数の電源に接続され,二次巻線にはスリップリングを介して電力変換装置によって交流二次電流が供給される。
電力変換装置は専用の変圧器を介して二重給電誘導機の一次側と同じ電源に接続される。
回転速度の変化に応じて電力変換装置が常に滑り周波数をもつ交流二次電流を供給することで,二重給電誘導機は電源側との同期運転を行うことができる。
電力変換装置により二次電流の大きさと周波数を制御することによって,電力変換装置と二次巻線との間で双方向に交流電力を制御することが可能である。
静止セルビウス方式と比較して同期速度以上での運転が可能なため,この方式は超同期セルビウス方式*1と呼ばれる。
電力変換装置としてはサイクロコンバータが一般的であるが,交流間接変換装置も適用される。
電力分野への代表的な適用例として,可変速揚水発電システムやエネルギー変換効率向上を意図した可変速風力システムなどがある。
風力発電機に適用した場合の特徴
- 速度制御は超同期セルビウス方式であるため,同期速度の上下に速度制御が可能となる。風速に見合った回転数に制御することで,発電機の出力を高く保つことができる。
- 発電機側変換器においてベクトル制御を採用すると,有効電力・無効電力の高速制御を実現する。
- 回転子に加える励磁電圧を変換器にて制御することで,固定子側に誘導される励磁電圧を系統電圧と同期が可能であるため,起動時の突入電流が小さい。
- 二次巻線や変換器の過電流保護として,系統事故時は一時的に二次巻線に抵抗を介して短絡させ,過電流の減衰を速めるクローバ回路を有する。
参考文献
- 平成21年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問1「二重給電誘導電動機」
- 「電気学会 用語解説 第144 回テーマ:二重給電交流機」
更新履歴
- 2022年7月24日 新規作成
- 2023年3月11日 参考文献に「電気学会 用語解説 第144 回テーマ:二重給電交流機」を追加
*1:二次励磁制御方式の一種