目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

一軸方式のガスタービンと排熱回収ボイラの制御システム

ガスタービンの運転で重要な制御はガバナ制御と燃焼温度制御である。

回転数を制御するガバナ制御では燃料流量を制御するが,蒸気系の出力応答性が遅いためガスタービンの応答を敏感にする必要がある。

そのためガスタービンの速度調定率は蒸気系に比べて小さく設定されることが多い。

ガスタービンの出力上昇過程では,燃焼温度が定格温度を超えて過剰に上昇しないようにガスタービンの出力を制御しなければならない。

これが燃焼温度制御であり,具体的にはタービン第 1 段翼入口ガス温度を一定値以下に保つために排ガス温度を測定し,その値が規定値を超過しないように空気流量を制御する。

排熱回収ボイラはガスタービンの排気を熱源とする自然循環ボイラであり,バーナなど助燃設備がない場合はドラム水位制御が主な制御である。

ドラム水位制御では,ドラムの水位,蒸気流量,給水流量を制御パラメータとする 3 要素制御を行う。

自然循環ボイラ

汽力発電所で用いられている自然循環ボイラについて,説明する。

自然循環ボイラの原理

汽水ドラムを有し,高温ガスから熱を吸収した水管内の汽水混合体と,火炉外部に設置された降水管内の水の密度差から生じる循環力を利用してボイラ水を循環させながら蒸気を得るボイラ。

使用圧力の適用範囲とその理由

自然循環ボイラは臨界圧力より低い亜臨界圧での適用となる。

水管内の汽水混合体と降水管内の水の密度差は圧力が高くなると減少するため,蒸気圧力を高くするほど密度差のみで充分な循環力を得ることは難しくなる。

このため,自然循環式の高圧大形ボイラにおいては,ボイラ高さを高くするとともに循環経路をできるだけ直管で構成し,水管径を比較的太くして管内抵抗を減少させることで循環力を確保する必要がある。

さらに,臨界圧力(22.06 [MPa])以上の圧力では水と蒸気の区別がなくなり,密度差もほとんどなくなることから循環させながら蒸気を得ることはできない。

ボイラ給水ポンプから供給される給水が蒸気としてタービンに供給されるまでの流体のフロー

ボイラ給水ポンプで供給される給水は煙道ガスの余熱を利用した節炭器で加熱され汽水ドラムに入る。

火は火炉外部に設置された降水管によりボイラ下部に導かれて火炉内の水管(水冷壁)で燃焼ガスと熱交換し,水と蒸気の混合物になって汽水ドラムに戻る。

汽水ドラムでは水と飽和蒸気を分離し,過熱器で飽和蒸気を過熱し蒸気タービンに供給する。

分離された水は飽和蒸気になるまで循環する。

貫流ボイラと比較した場合の自然循環ボイラの長所

  • 構造が非常に単純なボイラ
  • ボイラ制御が容易
  • 起動バイパス系統が不要
  • ドラムでの給水処理(薬品注入やブロー)が可能なため,復水脱塩装置などの高度な水質管理対策が不要
  • 保有水量が多いのでボイラが万一消火しても各種パラメータに注意すれば若干の時間は低負荷による運転継続が可能
  • 保有水量が多いので負荷の急変などの変動に強い
  • 使用圧力が比較的低く,汽水の循環も自然対流によるので配管の圧力損失分の給水ポンプ動力が少なくてすむ

参考文献

更新履歴

  • 2022年5月27日 新規作成
  • 2022年10月17日 参考文献に「平成25年度 第二種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問1」を追加