目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

光源の種類と特徴

本稿では,照明用に使用される光源の種類と特徴について述べる。

ルミネセンスを利用した光源には,放電によって発生した紫外放射をフォトルミネセンスで可視放射に変換した蛍光ランプ,エレクトロルミネセンスを利用した発光ダイオード(LED)などがある。

白熱電球

熱放射を利用した代表的な光源は白熱電球である。

一般照明に使用されている白熱電球 100 [W] は,入力に対して可視放射約 10 [%],赤外放射約 72 [%] であり,光源効率は約 16 [lm/W] である。

蛍光ランプ

電球形蛍光ランプ

近年,白熱電球と同じ口金で,ほぼ同じ形状・寸法をもつ電球形蛍光ランプが開発された。

このランプは,U 字形の発光管を複数接合したものやスパイラル形の発光管を点灯回路とともに,一つのコンパクトなグローブ内に収納した光源である。

発光原理は,一般の蛍光ランプと同様であり,約 1 [Pa] の水銀蒸気圧中の放電で発生した紫外放射を発光管内面に塗布した蛍光物質によって可視光に変換する。

一般に,発光管と点灯回路をコンパクトなグローブ内に収納して点灯すると,熱がこもり,水銀蒸気圧が上昇して,発光効率が大きく低下する。

そこで,電球形蛍光ランプでは,発光管内の電極近傍に水銀アマルガムを封入し,水銀蒸気圧を適切に制御することによってこの問題を解決し,10 [W] ~ 13 [W] 程度で白熱電球 60 [W] とほぼ同じ光出力を得ている。

一般形白色蛍光ランプ

古くから使用されている 40 [W] 一般形白色蛍光ランプは,入力に対する可視放射が約 25 [%],赤外放射が約 30 [%],損失が約 45 [%] であり,光源効率は約 75 [lm/W] である。

高周波専用蛍光ランプ(Hf 蛍光ランプ)

1990 年代に開発された高周波専用蛍光ランプ(Hf 蛍光ランプ)は,数十キロヘルツの高周波で点灯して発光効率を高めるとともに,電極損失などを低減し,光源効率を 110 [lm/W] まで改善している。

高周波専用蛍光ランプは高周波専用の 3 波長発光形蛍光ランプで,高周波点灯による電極ロスの低減と,管径を細くして紫外線の放射効率を最適化して,高効率と高演色性の両立をはかったランプである。

また,管径を細くすると,ランプ電流が減少し,総合効率の向上にもつながる。

Hf ランプは,インバータ式電子点灯回路内蔵の占用器具での使用に限られ,従来の蛍光灯器具ではしようできないため,ランプと安定器の間に [Hf]マークの表示が義務づけられている。

Hf 蛍光ランプの使用面では,高周波で点灯するのでフリッカが感じられないこと,電源周波数フリー等の特徴がある。

発光ダイオード(LED)

発光ダイオードは,半導体の pn 接合に拡散電圧以上の電圧を印加し,順方向電流を流すと,発光層に p 形から正孔,n 形からは電子が流れ込み,ここで再結合する。

このとき半導体の禁止帯幅 $E_\text{g}$ [eV] に相当する $h\nu$ のエネルギーを持つ光子を放出して発光する。

材料には,禁止帯幅の大きい周期表の Ⅲ 族と Ⅴ 族の半導体が主に使用され,発光色は,半導体の種類や構成を変えることにより種々のものを得ることができる。

LED は,半導体であるので,その接合部の温度が特性の変化や信頼性に最も影響する

特に一般に使用される白色 LED では,消費する電力のうち可視光に変換されるものは,高いものでも三十数パーセント程度であり,その他のすべての電力は損失となる。

このため筐体の放熱設計が重要になる。

一般に自然空冷の照明器具の使用環境は 35 [°C] 以下の温度であることを基本に設計されているので,電球形 LED ランプが密閉される照明器具,埋込み形照明器具などでは,その使用に制限を受けるものがある。

白色 LED

白色 LED は,三原色の LED を組み合わせて白色化する方法と,LEDの色光と蛍光体とを組み合わせて得る方法とがあるが,後者では青色 LED に黄色の蛍光体を組み合わせて白色化したものが普及している。

その代表的な方法として,青色 LED からの青色光の一部を,黄色光を発生する蛍光体に照射し,そこから得られる黄色光に LED からの青色光が混ざることによって白色光を発生させる方法がある。

このときの白色光のスペクトルの概略は下図となる。

図 白色光のスペクトルの概略

図 白色光のスペクトルの概略

このタイプは,入力に対する可視放射は 27 ~ 38 [%] であり,光源効率は 70 ~ 110 [lm/W] である。

LED を用いた白色照明ランプは,省エネ性に優れ,かつ寿命の長いランプとして,従来の白熱電球や蛍光ランプに替えて,普及が進みつつある。

発行ダイオードの発光原理と発光波長

半導体を pn 接合すると,電子で満たされた価電子帯と電子の満たされていない伝導帯との間に,電子が存在できない禁制帯が形成される。

LED は,半導体の pn 接合に順方向電流を流すと,n 形領域の電子と p 形領域の正孔とが禁制帯を越えて再結合するときに,禁制帯の幅に応じた波長の光を発生する。

LED の発光波長 $\lambda$ [nm] は,禁制帯幅 $E_\text{g}$ [eV],プランクの定数 $h$ [eV・s],光速 $c$ [m/s] が関係し,次式で求めることができる。

\[ \lambda = \frac{hc}{E_\text{g}}\times 10^{9} \approx \frac{1240}{E_\text{g}} \]

これによれば,可視領域に対応した発光を得るには,禁制帯幅 Eg を 1.59 eV ~ 3.26 eV とすることが必要になる。

LED の開発は,周期律表の主に Ⅲ 族と Ⅴ 族の化合物半導体が用いられ,可視領域に対応した発光の実用化は,赤,黄など比較的小さい禁制帯幅をもつ材料から始まり,実用化が困難であるとされた青色光は,GaN 系材料によって得られるようになった。

電球形 LED ランプ

電球形 LED ランプは,LED,点灯装置及び口金で構成され,安全性及び性能が損なわれないように用意に分解できない構造を採っている。

また,一般白熱電球代替用の外観は,口金,光拡散用グローブ及び放熱用の筐体で構成される。

ナトリウムランプ

ナトリウムランプは,ナトリウム蒸気中の放電を利用したもので,蒸気圧の低い低圧ナトリウムランプでは D 線と呼ばれる波長 589 [nm] の光を放射する。

このランプは演色性は悪いが,効率が良く,霧に対する透過率が良いので,トンネルや地下道照明に広く使用されてきた。

ナトリウム蒸気圧を高めると,発光スペクトルの波長域が広がると共に,D 線の自己吸収が起きて発光効率は低下するものの,光色は橙黄(とうこう)色から黄白色となり演色性が良くなる。

発光管にはナトリウム蒸気に対して安定な多結晶アルミナ管が使用されている。

発光管内にはナトリウムのほか,電気的特性を所定の値に保つための水銀アマルガム,始動用ガスとしてキセノンガスが封入されている。

メタルハライドランプ

メタルハライドランプは,構造的に高圧水銀と類似しているが,発光管の中に水銀のほかに発光物質として種々の金蔵のハロゲン化物が封入されている。

発光金属をハロゲン化物とすることにより,金属蒸気圧を高くすることができ,発光金属特有の発光スペクトルを得ることができる。

また,発光金属がアルカリ金属の場合には,発光管の石英ガラスとの化学反応を抑えてランプ寿命を延ばすことができる。

このメタルハライドランプ中の水銀は,点灯中のランプ電圧と発光管内温度を最適値に維持するための緩衝ガスの役割を果たしている。

メタルハライドランプは,種々の光色が得られる特長に加えて,効率が高く演色性に優れていることから,店舗などの屋内照明用に広く使用されているほか,形状的に配光制御が容易なことから OHP や液晶プロジェクタなど光学機器の光源としても利用されるようになってきた。

参考文献

masassiah.web.fc2.com

更新履歴

  • 2022年2月10日 新規作成
  • 2022年2月11日 参考文献に「平成21年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問7」「平成18年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問7」を追加
  • 2022年2月12日 参考文献に「平成16年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問3」「平成8年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問3」を追加
  • 2022年2月13日 参考文献に「平成16年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問4」を追加
  • 2022年6月19日 参考文献に「令和元年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問6」を追加
  • 2022年7月3日 参考文献に「平成25年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問4」を追加
  • 2022年7月16日 参考文献に「平成19年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問4」を追加
  • 2022年8月28日 参考文献に「令和4年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問4」を追加