天然ウラン中には,235U は 0.7 [%] 程度しか含まれておらず,大部分が 238U である。そのため,燃料としては,235U の濃度を 3 ~ 5 [%] まで濃縮し,UO2 に再転換して使用する。
原子炉内に挿入された燃料は,通常の運転状態では平均 3 ~ 5 年間程度熱エネルギーを放出した後,使用済燃料として取り出され,再処理を経て,転換・濃縮・再転換され燃料として使用される。
この閉じられた過程を原子燃料サイクル(nuclear fuel cycle)と呼んでいる。
再処理によって分離されたプルトニウムをウランと混ぜ合わせた混合燃料を MOX 燃料*1といい,これを現在の原子力発電所の軽水炉で使用することをプルサーマル*2という。
このように,繰り返し使用できるウラン燃料は,エネルギー資源の乏しい日本にとって,魅力的なものであり,原子燃料サイクルを確立することがきわめて重要である。
原子燃料サイクルの各過程
- 精錬 ウラン鉱山から採取した鉱石を精錬して,酸化ウラン(U3O8 イエローケーキ)にする。
- 転換 酸化ウランを六フッ化ウラン(UF6)にする。
- 濃縮 六フッ化ウランをウラン 235 が 3 ~ 5 % になるまで濃縮する。
- 再転換・加工工場 濃縮された六フッ化ウランを二酸化ウラン(UO2)粉末に転換し,円柱形の焼結ペレットに成型し,被覆管に詰め燃料棒とする。
- 使用 発電所で使用する。
- 再処理 発電所の使用済燃料を再処理工場でウラン,プルトニウムなどを回収する。
- 再利用 回収燃料のうちウランは転換工場に,プルトニウムは再転換・加工工場に送り,それぞれ処理され発電所で再び使用される。
原子燃料サイクルのメリット
原子燃料サイクルは,原子力発電の特長を活かすものであり,以下のようなメリットがある。
日本のエネルギー・セキュリティを高める
日本はエネルギー自給率が極めて低く,エネルギー資源の 9 割以上を海外からの輸入に頼っている。
原子力発電にともなって発生する使用済燃料を再処理することにより,回収されるウランやプルトニウムは,準国産エネルギー資源となりえ,日本のエネルギー・セキュリティを高められる。
高レベル放射性廃棄物の減容化・有害度の低減
使用済燃料を直接処分する場合,使用済燃料全てを高レベル放射性廃棄物として処理する必要がある。
これに対し,使用済燃料を再処理することで,資源として再利用できない核分裂生成物のみを取り出し,ガラス固化体にするため,高レベル放射性廃棄物の体積が 4 分の 1 にある。
また,ガラス固化体からは,ウランやプルトニウムが除かれるため,天然ウラン並みの有害度になるまでの期間が約 12 分の 1 に低減される。
余剰プルトニウムをもたない
「原子力の利用は平和利用に限る」とする日本は,余剰のプルトニウムをもたないことを国際的に表明している。
原子力発電によって生成されたプルトニウムを再び原子燃料として利用する原子燃料サイクルは,プルトニウムの消費においても非常に大きな意義がある。
参考文献
更新履歴
- 2021年12月31日 新規作成
- 2022年6月5日 参考文献に「平成10年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問6」を追加