目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

直流連系

我が国の一般送配電事業者(沖縄電力株式会社を除く。)間の電力系統は,互いに接続されることで広域運営が行われているが,これらの中には直流周波数変換装置や直流送電線等,直流設備を介した直流連系が存在する。

広域運営のための周波数変換所

我が国の系統周波数は 50 Hz と 60 Hz に分かれていることから,広域運営のための周波数変換所が現在 4 箇所存在する。

  • 佐久間周波数変換所(他励式,300 MW)
  • 信濃変電所(他励式,600 MW)
  • 東清水変電所(他励式,300 MW)
  • 飛騨信濃周波数変換設備(他励式,900 MW,2021年3月運開)

日本における広域系統長期方針(広域連系系統のマスタープラン)では,東清水変電所の自励式直流送電 600 MW(2028 年予定),新佐久間周波数変換所の自励式直流送電 300 MW(2028 年予定)が計画されている。

直流連系の長所と短所

周波数が異なる系統の連系が可能となること以外の直流連系の長所と短所は,次の通り。

直流連系の長所

  • 充電電流がないため,ケーブルによる長距離の連系が可能である。
  • 位相角による安定度問題がないため,長距離大容量の連系が可能である。
  • 交流系統の短絡容量は連系によって増大しない。
  • 潮流を急速かつ自由に制御できる。
  • 交流系統の事故が他系統に波及しない。
  • 送電線の建設費用が同等の交流と比較して小さい。

直流連系の短所

  • 変換設備の建設費用が高い。
  • 交流の短絡容量が小さいと,電圧・高調波不安定,軸ねじれ振動の問題が発生する。
  • 多端子系統の構成では制御・保護が複雑となる。
  • 高調波や高周波対策が必要となる。
  • 交流のじょう乱で運転に影響を受ける。
  • 他励式の場合,送電電力に応じた無効電力補償装置が必要となる。

BTB 方式

周波数が同じ電力系統間において,直流連系が採用されている場合がある。そのうち,BTB 方式と呼ばれる直流連系について説明する。

BTB 方式の特徴

BTB 方式による直流連系の設備構成上の特徴は,2 組の交直変換装置を 1 箇所に設置し交直変換装置同士が背中合わせとなるような設備構成(Back to Back)となっており,交直変換装置間に直流送電線がない。

BTB 方式の採用理由

交流連系とした場合,一般送配電事業者 3 者間(中部電力パワーグリッド,北陸電力送配電,関西送配電)にまたがる交流ループ系統になり,常時の潮流制御が困難になるため。

交流ループ系統を運用するノウハウが蓄積された今日においては,BTB 方式は廃止される*1

北陸地域と中部地域間の交流ループ系統の潮流調整として,南福光変電所・連系所に 2 台の交直変換器で直流送電線を介さない BTB(Back to Back)方式の変換容量 300 MW の直流連系設備が 1999 年に運転を開始した。

同設備には水冷式光直接点弧サイリスタバルブが使用されており,また,系統運用としてなんらかの理由で常時の交流連系が解け,北陸系統が単独となった緊急時に北陸系統の周波数変動を改善するため北陸系統と中部系統の周波数偏差に応じて連系電力を AFC 制御機能が付加されている。

(出典)道上 勉 著,「電気学会大学講座 送配電工学[改訂版]」

参考文献

更新履歴

  • 2022年11月9日 新規作成
  • 2023年10月21日 参考文献に「広域系統長期方針」を追加
  • 2024年3月30日 BTB 方式廃止を追加,検索エンジン向けタイトル,SNS 向けタイトルを追加

*1:中部電力パワーグリッドの2024年度供給計画によると,南福光連系所の BTB は 2026年4月に廃止される予定である。