目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

電力系統の構成

発電機による電気エネルギー発生が実現して以来,電力系統工学は急速に発展してきた。

電気を発生して,輸送し,供給・販売するという電気事業はエジソンによって 1882 年に始められた。

電気事業の根幹たる電力系統は,ベースロードありき,集中型,一方通行を前提として構成され,各国の経済発展を支えてきた。

しかし,一部の国では経済発展が停滞していることに加え,地球温暖化を背景とした脱炭素に向けて,電力系統は,分散型,双方向型,再生可能エネルギー発電中心へとシフトしていくことが求められている。

電力系統の構成

電力系統の構成は,ループ系統放射状系統に大別される。

ループ系統(loop system)

発変電所間ならびに変電所相互間が異なったルートの電線路で環状に接続,運用されている系統。

ループ系統では,送電ルートが複数あるため,安定度,電圧安定性が高く,送電可能電力が大きい。

ループ系統では,片方のルートが使えなくなっても,残りのルートで送電でき,信頼度が高い。しかし,保護システムが適切でなければ,事故が系統全体に波及し,広域停電に至る可能性がある。

ループ系統では,ループ間の潮流を制御することが難しい。

また,片方のループが使えなくなったとき,潮流分布が大きく変化する。

ループ系統では,短絡電流が大きくなりやすく,上位定格の遮断器の採用,あるいは,高インピーダンス機器,限流リアクトルの採用,上位電圧,母線分割の採用による系統分割などの抑制策が必要となることがある。

放射状系統(radial system)

発変電所間ならびに変電所相互間が単一ルートの電線路で放射状に接続,運用されている系統。

放射状系統では,送電ルートが一つしかないため,安定度,電圧安定性はループ系統ほど高くなく,送電可能能力も大きくない。

放射状系統では,ルート断により下位系統への送電が完全にできなくなるので,ループ系統ほど信頼度は高くない。回線数を増やすことでルート断を防ぐ,あるいは,構成上はループ系統とし,常時運用は放射状系統で事故時に系統切換えを行うことで,信頼度低下を抑えることができる。事故が系統全体に波及することはない。

放射状系統では,潮流制御の必要がない。

また,事故時を含み,潮流状況の把握が容易である。

放射状系統では,短絡電流はループ系統ほど大きくならない。

グリッド系統(grid system)

中規模の需要地が散在し,電源がその間に分散している場合に,電源と需要地が交互に接続,運用されている系統。

マイクログリッド

マイクログリッドは,米国エネルギー省において次のように定義されている。

明確に定義でき,グリッドという形で一元的に管理できる事業体として機能する電力系統の中で,負荷と分散型エネルギー資源を相互に接続したグループを指す。

マイクログリッドは,グリッドに接続した状態でも分離状態(アイランド状態)でも動作するように,グリッドとの接続と切り離しが可能である。

なお,この定義では,系統と全く連系されないオフグリッド型はマイクログリッドには当てはまらないが,近年では,マイクログリッドに入れる場合が多い。

 

電力系統の構成の特徴を,安定度及び電圧安定性,信頼度,潮流運用,短絡電流の観点から対比して説明する。

フグリッド

フグリッド(off-grid あるいは offgrid)とは,ある建物やコミュニティが,既存あるいは公共のインフラストラクチャーに依存せずに,電力,ガス,水道などのライフラインのうち少なくとも 1 つを自分たちで確保できている状態を指す。

とりわけ電力の場合は,小規模な電力系統が,既存の大規模な電力系統から切り離された状態を指す。

フグリッド化のメリット

フグリッド化している系統は大規模系統の影響を受けないように設計されているため,自前の電源さえ動作していれば電力の自給自足が可能であることが多い。

電気料金の削減についても,電力の自給自足により達成される。

フグリッド化の課題

フグリッド化の課題として,外部に協力を求めることができないため,系統内で怒るすべての事象に対して自前の設備で対応する必要がある。

太陽光電池と蓄電池を組み合わせた電源構成は比較的容易に創造できるが,これらは電圧や周波数の瞬間的な変動に対して,既存の大規模系統よりも弱い。

加えて中長期的に天候が晴れや曇り・雨のどちらかに偏るような場合も,エネルギーの面からバランスを保つことが難しい。

安定度及び電圧安定性

ループ系統では,送電ルートが複数あるため,安定度,電圧安定性が高く,送電可能電力が大きい。

放射状系統では,送電ルートが一つしかないため,安定度,電圧安定性はループ系統ほど高くなく,送電可能能力も大きくない。

電力系統の安定度

電力系統の安定度とは,負荷変動,系統操作,短絡や地絡事故などの系統内の擾乱に対して安定に送電を継続できる度合いをいい,定態安定度と過渡安定度とがある。

定態安定度とは,徐々に負荷を増加した場合など微小な擾乱に対して安定に運転を行える度合いをいい,その限界の電力を定態安定極限電力と呼ぶ。

なお,定態安定度,過渡安定度は,擾乱の大きさからの分類であり,発電機の自動電圧調整装置等の制御装置を考慮した分類もある。

線路抵抗の損失を無視した場合の受電端有効電力の最大は,相差角が π/2 のときで,これが定態安定極限電力となる。

この定態安定度の説明には,P - δ 曲線(電力・相差角曲線)が用いられる。

ここで,相差角が微小変化したときの送電電力の変化の割合を同期化力という。

相差角の小さな領域ではその増加とともに送電電力は増加するが,相差角が π/2 を超えると逆に減少するようになる。

これは,負荷増加に対応して相差角が大きくなり,送電電力が増えようとしても,反対に送電電力が減少することを意味し,安定な送電は継続できない。

信頼度

ループ系統では,片方のルートが使えなくなっても,残りのルートで送電でき,信頼度が高い。しかし,保護システムが適切でなければ,事故が系統全体に波及し,広域停電に至る可能性がある。

放射状系統では,ルート断により下位系統への送電が完全にできなくなるので,ループ系統ほど信頼度は高くない。

回線数を増やすことでルート断を防ぐ,あるいは,構成上はループ系統とし,常時運用は放射状系統で事故時に系統切換えを行うことで,信頼度低下を抑えることができる。

事故が系統全体に波及することはない。

電力系統の信頼度を評価する場合

電力系統の信頼度を評価する場合,事故による供給支障の確率を用いることがある。供給設備からみた場合,$n$ 台の同一仕様の発電機からなる電源で,発電機 1 台当たりの事故停止確率が $s$ であるとき,同時に発電機 $k$ 台が事故停止している(残りの $(n-k)$ 台の発電機は健全である確率 $p_k$ は,下式で表される。

\[ p_{k}=_{n}C_{k}\cdot s^{k} \cdot (1-s)^{n-k} \]

これによれば,発電機 3 台の電力系統において,発電機 1 台当たりの事故停止確率が 0.05 であるとき,同時に発電機 2 台が事故停止している(残りの 1 台の発電機は健全である)確率は,0.00713 である。

事故による供給支障の確率の計算

与えられた式に $n=3$,$s=0.05$,$k=2$ を代入する。

\[ p_2 = _3 C_2 \times 0.05^2 \times (1-0.05)^{3-2}=7.125\times10^{-3} \]

潮流運用

ループ系統では,ループ間の潮流を制御することが難しい。また,片方のループが使えなくなったとき,潮流分布が大きく変化する。

放射状系統では,潮流制御の必要がない。また,事故時を含み,潮流状況の把握が容易である。

ループ状送電系統の潮流制御

ループ状送電系統内の潮流分布は,発電端や負荷端で流出入する有効電力,無効電力及びループを構成する各送電線のインピーダンスによって決まる。

このことにより,ある送電線に過度の潮流が集中することや各送電線の送電容量に見合った潮流分布にならないことが起こりうる。

このようなことは,重潮流による送電損失の増加,系統安定度の低下,事故の波及リスクの増大といった観点からも好ましくない。

ループ状送電系統の潮流を制御する方法(直流設備による方法を除く。)としては,次の方法がある。

  1. 送電線に直列コンデンサを挿入して,各送電線のリアクタンス比を変える方法
  2. 移相変圧器(位相調整器)を用いて,送電端と受電端の電圧の相差角を変える方法

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短絡電流

ループ系統では,短絡電流が大きくなりやすく,上位定格の遮断器の採用,あるいは,高インピーダンス機器,限流リアクトル*1の採用,上位電圧,母線分割の採用による系統分割などの抑制策が必要となることがある。

放射状系統では,短絡電流はループ系統ほど大きくならない。

標準電圧

送電線路の相互連系を容易にすることや,機器の規格化などを考慮し,送電電圧は数種類の標準電圧に統一されている。

我が国の標準電圧は電気学会・電気規格調査会(JEC)で定められており,公称電圧最高電圧の 2 種類がある。

例えば,公称電圧が 66 kV の場合は,最高電圧は 69 kV となっている。

なお,送電線路の電圧としてこの標準電圧を採用する場合,公称電圧が電気設備技術基準の「使用電圧」となる。

送電電圧の増加

我が国では,1907 年,東京電燈が駒橋発電所と早稲田との間で 55 kV 送電を始めた。

甲信幹線により 154 kV,新北陸幹線により 275 kV,房総線により 500 kV,そして南新潟幹線と西群馬幹線で 1 000 kV となり送電電圧が増加してきた。

しかし,我が国の経済状態の停滞に伴い電力需要も停滞したため,実際には 1 000 kV での送電は行われていない。

参考文献

更新履歴

  • 2021年10月27日 新規作成
  • 2022年1月21日 ループ系統と放射状系統の定義を追加
  • 2022年3月6日 参考文献に「平成27年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問4」を追加
  • 2022年5月5日 参考文献に「令和3年度 第二種 電気主任技術者試験 一次試験 法規 問7」を追加
  • 2022年8月13日 参考文献に「平成22年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問6」を追加
  • 2022年8月15日 参考文献に「平成18年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 法規 問6」を追加
  • 2022年9月3日 マイクログリッド,送電電圧の増加を追加し,参考文献に「マイクログリッド技術の新展開~米国における技術開発を中心として~」を追加
  • 2022年11月6日 参考文献に「平成25年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問6」を追加
  • 2024年9月14日 オフグリッドを追加

*1:限流リアクトルは,交流回路に直列に接続され,短絡故障時の短絡電流を抑制するために使用される。機械的,熱的保護のみならず,遮断器の遮断容量の低減を目的としている。短絡故障時の大きな短絡電流に電気的,機械的に耐える必要があるため,堅ろうな作りとなっている。