第7次エネルギー基本計画における電力需要の見通しにおいて大きな課題と認識された,データセンターなどの DX (デジタルトランスフォーメーション)の進展に伴う電力需要の見通しについて説明する。
データセンターとは
データーセンター (DC : Data Center) とは,IT 機器(サーバ,ストレージ,ネットワーク機器など)を集中的に設置し,安定的に運用・管理するための専用施設である。
現代の情報通信インフラの中心的な存在で,クラウドサービス,業務システム,社会基盤などのデジタル化を支える重要な施設である。
大量のデータやアプリケーションを保管・処理するサーバ群の運用,ネットワークの中継や集約とともに,高度なセキュリティと可用性の確保が求められる。
さらに,近年急速に存在を高めている生成 AI は,膨大なデータ学習とリアルタイムの推論処理を必要とするため,従来のデータセンターよりも高性能な GPU を搭載し,高密度かつ高速な演算処理を備えた AI 専用データセンターの整備が進んでいる。
データセンターの電力需要
データセンターに用いられる最新型サーバの 1 台あたりの消費電力は性能向上とともに近年急速に増加している。
データセンターは,大規模化と電力高密度化が進み,1 棟あたりの電力需要の増加が続き,配電用変電所の容量 60 MVA(20 MVA × 3 バンク)に匹敵する。
| 年代 | 種類 | 消費電力 | 内訳 |
|---|---|---|---|
| 2000 年頃 | インターネット DC | 2 ~ 5 MW | 2 kW/ラック × 1500 ラック |
| 2010 年頃 | キャンパス型 DC | 10 ~ 15 MW | 4 ~ 6 kW/ラック × 500 ラック × 複数棟 |
| 2020 年頃 | Hyperscaler 仕様 DC | 20 ~ 50 MW | 7 ~ 9 kW/ラック × 4000 ラック |
| 2025 年~ | AI 仕様キャンパス型 DC | 300 MW ~ 1 GW | 20 ~ 70 kW/ラック × 1000 ラック × 複数棟 |
日本のデータセンターの立地条件
日本国内のデータセンターは,総務省・経済産業省の資料によると 2023 年度で 510 棟である。
また,日本データセンター協会が公開しているデータセンター一覧によると,東京・大阪の大都市部に集中していることがわかる。
データセンターが,東京・大阪の大都市部に集中する理由を以下に示す。
- 国内外の通信事業者が相互接続を行う大規模なインターネットエクスチェンジ (IX) の拠点が集積し,低遅延かつ大容量の通信環境がある。さらに,光ファイバー網や国際海底ケーブルの陸揚げ拠点にも近く,グローバルな接続性で優位性を持つ。
- データセンターの主な利用者である大企業,金融機関,官公庁などが東京・大阪に集中しており,特にリアルタイム性や可用性が重視される業務系システムにおいては,ユーザとデータセンター間の物理的距離が重要となる。
- 東京・大阪には大容量の電力供給インフラが整備されており,電力供給の信頼度が高い。また,堅牢な構造を備えた建物の物件が多く,選択肢が多い。
- 東京と大阪に分散して拠点を設け,いずれかの都市が被災しても,他方がバックアップセンターとして機能できる体制を構築し,BCP(事業継続計画)を強化する運用が一般的になっている。
第3 のデータセンター集積地 : 富山県南砺市
富山県南砺市は,受電電力 3.1 GW のデータセンターの集積地を立ち上げる計画を進めている(2025年12月19日,ロイター)。
民間開発業者である GigaStream 富山とともに計画を進めている。
生成 AI などの普及に伴い,データセンターの需要は急増しているが,国内のデータセンターは約 85 % が東京圏と大阪圏にあり,「第 3 のデータセンター集積地」の必要性が指摘されていた。
政府も地域分散がボトルネックを緩和するために重要だとしている。
南砺市は東京と大阪の双方から約 250 km の距離にあり,低リスク地域と見なされている。
気象庁によれば,富山県は大規模地震の少ない県の一つとされる。
データセンターの省エネ化
データセンターの 1 棟あたりの電力需要が増加しているが,この対策として,電力消費効率の改善の研究開発が進められている。
例として,NTT が研究開発を進めている IOWN (Innovative Optical and Wireless Network) では,光電融合デバイスの実現により消費電力を従来の 1/100 程度に低減する。
また,APN (All Photonics Network) により遅延時間を 1/125 に短縮するとともに,伝送容量を 125 倍に拡大する可能性がある。
これにより,大幅な省エネ化の実現とともに,従来の伝送遅延による立地制約(例えば都心から 35 km 圏内)を緩和することが可能となる。
IOWN
NTT が提唱する,次世代のコミュニケーション基盤構想である。
光技術を中心とした革新的な技術を活用し,これまでのインフラの限界を超え,あらゆる情報を基に個と全体との最適化を図り,多様性を受容できる豊かな社会を創造することを目的としている。
IOWN は,3 つの主要な技術要素から構成される。
- オールフォトニクス・ネットワーク (APN : All Photonics Network)
- デジタルツインコンピューティング (DTC)
- コグニティブ・ファウンデーション (CF)
参考文献
- 馬橋義美津・明道保衛・山田智之「ワット・ビット連携」,電気書院,2025年9月30日
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更新履歴
- 2026年3月21日 新規作成
