目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

交流フィルタ設備

図の破線内は,三相 6 600 [V],60 [Hz] の高圧母線から給電されるサイリスタ変換装置用の交流フィルタ設備の例である。

変換装置は 12 パルスで,変換装置用変圧器の交流側の容量は 1 000 [kV・A] である。

図 高圧母線から給電されるサイリスタ変換装置用の交流フィルタ設備

図 高圧母線から給電されるサイリスタ変換装置用の交流フィルタ設備

$X$ で示すリアクトルは限流リアクトルであり,これによって交流系統の短絡容量などの条件が交流フィルタ設備にあまり影響しないようにしている。

このリアクトルのリアクタンスは,1 000 [kV・A] を基準として 4 [%] である。

その 1 相当たりのインダクタンスは,4.62 [mH] である。

6 パルスサイリスタ変換装置から発生する 5 次及び 7 次の高調波は,12 パルスサイリスタ変換装置からは,理想的には発生しないが,実際には制御角のばらつきなどによってわずかに発生する。

短絡容量が変換装置容量の数十倍で,インピーダンスが誘導性の一般的な系統条件では,第 11 分路を接続することによってこれらの高調波の系統への流出が増加するので,これを防止するためにこれらの高調波に対する分路を設け,各分路の設備容量を第 5 分路 : 120 [kvar],第 7 分路 : 80 [kvar] 及び第 11 分路 : 200 [kvar] とした構成としている。

第 11 分路のリアクトルの 1 相当たりのインダクタンス $L_{11}$ は 4.81 [mH] である。

第 11 分路は,12 パルス変換装置から発生する 11 次の高調波電流だけでなく,それ以上の次数の高調波電流も吸収する。

LC フィルタ

LC フィルタの原理

LC フィルタは,コンデンサ,リアクトルといった受動素子を組み合わせて,特定の周波数又は周波数領域で低インピーダンスとなる分路を構成し,高調波を抑制する。

LC フィルタ設置に当たり留意すべき点

  • 高調波発生機器停止時は,進み力率を避けるため,LC フィルタを開放することが望ましい。
  • LC フィルタは,発生する高調波次数に対応した分路を組み合わせるため,分路の次数や低次側に電力系統インピーダンスとの共振点が現れる。共振している次数の高調波が存在すると,その高調波電流が増加して変換装置が運転不可能になるため留意する。
  • LC フィルタは,進相コンデンサに比べて高調波電流の流入が多いため,遮断後の回復電圧が大きくなる。このため,遮断直後の過渡回復電圧抑制用サージアブソーバの設置や 1 ランク上の定格電圧の遮断器を採用する必要がある。
  • LC フィルタは電力系統内で第 n 次高調波に対して短絡回路を形成するため,電流耐量に留意する。
  • 励磁突入電流の引き込みが大きい場合には,耐量向上又は運用上の対策が必要となる。
  • 同調フィルタの並設時は,それぞれの LC フィルタの同調点をずらして,フィルタインピーダンスを大きくする。

参考文献

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