目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

送電用変電所に用いられる油入変圧器の過負荷運転

変圧器は,使用しているうちに次第に劣化を生じる。主な劣化箇所は絶縁物であり,次の要因が考えられる。

  • による劣化
  • コロナによる劣化
  • 機械的応力による劣化

このうち,過負荷運転による劣化に最も大きな影響を及ぼすのはによる劣化である。

変圧器の過負荷運転は,寿命を犠牲にする場合もあるが,次の

  • 周囲温度が低い
  • 過負荷時間が短い
  • 温度上昇試験記録が規定温度上昇値に達しない

という条件下において,巻線の最高点温度を最大でも 95 °C として連続運転した場合には,正規寿命(設計時点で定義された運転・温度状態で使用した場合の設計寿命)が期待できる。

ここで,正規寿命を期待する場合の許容負荷が表 1 のように示される変圧器を,表 2 のような負荷パターンで短時間過負荷運転する場合を考える。

このとき,変圧器の寿命を犠牲にせずに過負荷運転が可能な等価周囲温度を表から読み取ると 30 °C 以下である。

ただし表 1 は,軽負荷時の負荷率が何 % 以下であるかに応じて,等価周囲温度 [°C] と過負荷時間 [h] により決まる許容負荷(定格負荷に対する百分率)の最大値を表す。

また,表 2 の負荷パターンにおける軽負荷時の負荷率は

軽負荷時の負荷率 = $\displaystyle \sqrt{\frac{H_1 \cdot {P_1}^2 + H_2 \cdot {P_2}^2 + H_4 \cdot {P_4}^2 + H_5 \cdot{P_5}^2}{H_1+H_2+H_4+H_5}}$ [%]

により求められるものとする。

表 1 許容負荷(定格負荷に対する百分率)
軽負荷時の負荷率 [%] 50 % 以下 70 % 以下 90 % 以下
等価周囲温度 [°C] 10 20 30 10 20 30 10 20 30
過負荷時間 0.5 ~ 24 h における許容負荷
(定格負荷に対する百分率)
0.5 150 148 144 150 144 139 147 137 132
1 144 137 132 142 134 129 138 129 123
2 133 129 125 131 126 123 129 125 115
4 128 124 121 125 122 115 123 112 109
8 118 110 106 118 110 106 115 109 104
24 112 104 100 112 104 100 112 104 100
表 2 負荷パターン
No. 時間帯 負荷時間 負荷率 負荷種別
1 0 時 ~ 8 時 $H_1$ = 8 h $P_1$ = 20 % 軽負荷
2 8 時 ~ 12 時 $H_2$ = 4 h $P_2$ = 60 % 軽負荷
3 12 時 ~ 16 時 $H_3$ = 4 h $P_3$ = 120 % 過負荷
4 16 時 ~ 18 時 $H_4$ = 2 h $P_4$ = 80 % 軽負荷
5 18 時 ~ 24 時 $H_5$ = 6 h $P_5$ = 40 % 軽負荷

参考文献

  • JEC-204 (1978)
  • 「高経年設備更新ガイドライン」(電力広域的運営推進機関)
  • 「油入変圧器運転指針」(変圧器信頼性調査専門委員会)
  • 令和3年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問3

更新履歴

  • 2022年5月21日 新規作成
  • 2022年5月29日 参考文献を追加