周波数制御用発電所は一般に次のような条件を具備しなければならない。
- 必要とする調整能力(kW , kW・A)を常時持っていること。
- 出力調整が容易で負荷変動に対する応答性が高く,さらに高効率運転ができること。
- 出力調整により水力発電所では水量の変動により水利上で支障が生じないこと。
- 出力調整により送電系統に支障が生ぜず,また通信設備が完備していること。
周波数制御用発電所のうち水力発電所では,揚水発電所及び比較的大容量の貯水池式又は調整池式水力発電所が使用されている。
また夜間は調整力確保のために可変速揚水発電所も採用されている。
大容量火力発電所も使用されているが,定格出力に対する調整幅の割合や,調整速度とも水力に比べ小さい。
要因の一つとして,出力変動が大きい場合にタービンにおいて熱応力の問題があげられる。
これら水力や火力を組み合わせることで,系統周波数の変動幅を最大で ± 0.1 ~ 0.3 Hz 以内を目標とするように出力調整されている。
電力系統における周波数調整を受け持つ水力発電所の運用
電力系統の負荷は,時々刻々と変動する。
この変動は,時間的に数分程度以下の微小変動,数分から 10 分程度までの短周期変動,10 分程度以上の長周期変動に分けられる。
この微小変動に対して,水力発電所では,周波数が上がると発電機出力を減らし,逆に下がると発電機出力を増加させる制御を調速機(ガバナ)の動作により行い,周波数変動を抑制している。
また,調整池式水力発電所及び貯水池式水力発電所は,火力発電所とともに短周期周波数変動に応じて出力調整を行う周波数制御発電所として機能している。
これらの水力発電所に求められる主な機能としては,
- 調整のための十分な出力変動幅及び運転継続能力を持つこと
- 負荷変動に対する速応度(速応性),追随性(追随能力)が高く,出力の変動範囲で高効率運転ができること
- 出力変動により,水利上及び送電上の支障が少ないこと
である。
揚水発電所の電力系統における運用とその役割
揚水発電所は,上池と下池の二つの貯水池をもち,通常電力系統の負荷が小さくなる夜間の時間帯に,原子力発電や火力発電を使用して下池の貯水を上池へ揚水して貯え,電力系統の負荷が大きくなる時間帯に発電を行うピーク供給力として運用される。上池の自流分を除いた揚水発電所の総合効率は約 70 [%] 程度である。
停止中の揚水発電所は数分程度で起動して電力を供給することができるため,電力系統の負荷変動時あるいは事故時にも安定して電力供給を継続するために必要な供給予備力のうちの運転予備力という役割を担っている。この予備力は,電力系統の負荷の 3 ~ 5 [%] 程度である。
また,揚水運転中の可変速揚水発電設備は,系統に並列している発電機の運転台数が少ない場合に,周波数調整に活用されている。
参考文献
- 令和5年度 第一種 電気主任技術者 二次試験 電力・管理 問6「電力系統の周波数制御」
- 平成27年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問3「周波数制御用発電所」
- 平成21年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 法規 問7「揚水発電所の電力系統における運用とその役割」
- 平成18年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 法規 問5「電力系統における周波数調整を受け持つ水力発電所の運用」