変圧器は一般に,高圧巻線と低圧巻線がそれぞれ単独に,必要な容量の巻線から構成される。
単巻変圧器では低圧巻線を高圧巻線と共有することに特徴がある。
この場合,一般の変圧器に比べ,変圧器の自己容量は低減する。高圧側電圧 500 [kV] と低圧側電圧 275 [kV] の場合には,別巻線とする場合に比べ,自己容量が 0.45 倍*1となる。
内鉄形変圧器は,一般には,鉄心を先に組み立てておき,これに巻線を挿入した後,上部ヨークを組み立てる構造である。
変圧器の鉄心材料は,透磁率が大きく,飽和磁束密度が大きく,鉄損が少ないけい素鋼板が用いられ,渦電流損を減少させるために成層構造になっている。
大形変圧器の構造・材料
電力用の大形変圧器では,透磁率を高くするために,鉄心材料には方向性けい素鋼板(grain-oriented electrical Si-steel sheet)*2が用いられ,その表面に絶縁皮膜処理を施して,これを短冊状に切り,積層して鉄心を構成する。
方向性けい素鋼板は,製造時の圧延方向とその垂直方向とでは,磁気特性が非常に異なるので,鉄心の構成に当たっては磁束の方向と圧延方向とが一致するように留意する。
また,絶縁電線を木製巻型又は絶縁筒の上にコイル状に巻き,絶縁処理を施した後,鉄心に組み込む。
このような巻線方法は,型巻と呼ばれ,鉄心と巻線の製作が並行して進められる利点がある。
方向性けい素鋼板
大形変圧器に一般に用いられている鉄心材料は方向性けい素鋼板である。
方向性けい素鋼板は結晶格子が同一方向に配向しており,無配向けい素鋼板に比べて,鉄損,磁気ひずみが小さく透磁率が高いので,大形変圧器の低損失化や低騒音化,小形化に寄与している。
方向性けい素鋼板は,鋼板製造時の圧延方向と同じ方向に磁束を流し,その特性を最大限に活用するような鉄心形状が用いられている。
また,最近では磁化特性の改善のため,磁区の高配向性化やレーザ照射などにより材料表面に溝を形成する磁区制御技術が適用されている。
小形変圧器の構造・材料
柱状変圧器などの小形変圧器の鉄心は,従来,大形変圧器と同様に,方向性けい素鋼板を短冊状に切って積層していたが,高効率化のために,最近では,方向性けい素鋼帯による巻鉄心からなるカットコアが広く用いられている。
この鉄心の特長は,小型の割に継ぎ目が少なく,鋼帯の透磁率が高いので,励磁電流は小さく鉄損が少ないことである。
さらに,現在では,一層の低損失化を図るためにアモルファス材の巻鉄心を使用した変圧器も実用化されている。
巻線は,普通,低圧巻線を巻いて絶縁を施した後,その上に高圧巻線を巻いて作られる。
参考文献
- 平成27年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問6
- 平成19年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 電力 問2「変圧器の構造及び材料」
- 平成17年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問2
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