目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

電気鉄道システム

電気車の走行性能はレールと車輪路面との摩擦で決まる粘着係数によって制限されるが,限界を超えると車輪が空転・滑走(巨視滑り)を起こし,牽引力・ブレーキ力が著しく低下する。

この空転・滑走は電動機制御系には負荷急変の外乱となり,速やかな制御応答が要求される。

近年普及した誘導電動機のインバータ制御による駆動方式はその制御応答に優れ,なかでも小形化が求められる電車方式には電圧形 PWM 制御インバータ駆動方式が一般的に多数採用されている。

また,エネルギーの有効利用を図るために電力回生ブレーキが採用されている。

電気鉄道のき電方式

電気鉄道のき電方式には直流き電方式及び交流き電方式がある。

交流き電方式には数種類あるが,変電所間隔が大きくでき,かつ,通信誘導障害にも比較的有利な AT き電方式が多く採用されている。

また,275 [kV] 系から受電する新幹線の変電所の場合には,き電変圧器に変形ウッドブリッジ結線変圧器を使用し,中性点を接地することによって経済的な絶縁レベルとしている。

わが国では両方式ともレールを電流の帰路とするため,レールからの漏れ電流が種々の障害を発生させる場合がある。

直流き電方式

直流き電方式では,線路に近接して水道管などの地中埋設金属があると,漏れ電流は大地より抵抗の低い金属体を通り,変電所付近で流出してレールに帰るため,地下水が電解液として働き,流出部分が腐食する。

このような現象を電食*1といい,これを防止するために,変電所間隔の短縮,帰線抵抗の低減や,流電陽極や排流器の設置などが行われる。

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交流き電方式

交流き電方式では,この漏れ電流があるため,架線を流れる電流とレールを流れる電流とが等しくないので,併設された電話線に影響を及ぼす通信誘導障害を発生させる場合がある。

また,漏れ電流以外に電気鉄道周辺に影響を及ぼすものとして,パンタグラフの離線によって生じるアーク放電に起因する電波があり,ラジオ放送,テレビ放送,無線通信などにノイズとして混入する場合がある。

参考文献

更新履歴

  • 2022年2月14日 新規作成
  • 2022年7月10日 参考文献に「平成22年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問5」を追加

*1:電食は英語で stray-current corrosion(迷走電流腐食)と称される。また,ISO 8044 : 2015 において stray-current corrosion は,「意図された回路以外の通路を通って流れる電流によって引き起こされる impressed current corrosion」と定義されている。