直流機(direct current machine)では電機子巻線(armature winding)によって発生する交流を整流子(commutator)によって直流に変えることを整流作用という。
整流子の構造
整流子は,運転中に常にブラシと接触して摩耗するばかりでなく,火花などによってかなり高温になるため,電気的にも機械的にも丈夫につくられている。
整流子は,硬引銅の整流子片を良質のマイカ板(片間マイカ)で相互に絶縁し,円筒形に組み立てたものである。
整流子と電機子巻線の接続はライザ(riser)を介して行うのが普通である。
ライザは整流子片にリベット止めされ,電機子巻線とはんだ付けされる。
整流子と電機子がほぼ同じ直径であれば,電機子巻線は接続整流子片の耳に接続される。
高速度機の整流子や,軸方向の長さの大きい整流子には銀入整流子片を用いる。
この材料は 0.03 ~ 0.3 % の銀を含み,機械的強度が高く,焼きなまし温度が高い(約 300 °C)が特徴である。
リアクタンス電圧
電機子が回転すると,隣り合った二つの整流子片がブラシで短絡される状態が生じ,その都度コイルの電流 $I_\text{C}$ はその方向を反転する。
いま,回転している整流子の周辺速度を $v_\text{C}$ [m/s],ブラシの幅を $b$ [m],整流子間の絶縁マイカの厚さを $\delta$ [m] とすれば,整流時間(整流周期,commutating period) $T_\text{C}$ [s] は次式で与えられる。
\[T_\text{C}=\frac{b-\delta}{v_\text{C}}\]
例として,$b - \delta =$ 0.01 m,$v_\text{C} =$ 10 m/s とすれば,$T_\text{C} =$ 0.001 s となるから,整流時間は極めて短いものである。
主にコイルの自己インダクタンスによって,整流中に電流の反転による電流変化に応じてコイルに誘導起電力が生じる。
これをリアクタンス電圧という。
整流時間 $T_\text{C}$ におけるコイル内の電流変化を示した図を整流曲線という。
良好な整流が得られないと整流子面の火花が激しくなり,整流子面を損傷させ,ブラシの磨耗を早めることになる。
その対策として,主磁極間の幾何学的中性軸の位置に補極を取り付け,リアクタンス電圧を打ち消す方向に電圧を誘導して,良好な整流を得ることができる。
これを電圧整流という。
参考文献
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更新履歴
- 2022年2月2日 新規作成
- 2022年3月18日 参考文献に「電気機器工学 Ⅰ 改訂版」を追加