目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

円筒形同期発電機の誘導起電力

円筒形同期発電機は,電機子巻線の各コイル辺に誘導される起電力の波形がギャップの磁束密度の分布と相似であるため,ギャップの磁束密度分布がなるべく正弦波形に近くなるように回転子構造上の工夫をしている。

しかし,ギャップの磁束密度の分布はほぼ台形に近くなり,起電力の波形もひずみ波になりやすい。そこで電機子巻線を分布巻及び短節巻にすることによって,電機子巻線の誘導起電力を正弦波形に近づけている。

毎極毎相のスロットの数が 1 の集中巻・全節巻では,毎極毎相の起電力は,そのスロットの各コイルの起電力の代数和となる。

分布巻の場合は,いくつかのスロットにコイルが分布して巻かれているため,隣り合ったスロットのコイルの起電力は位相が異なり,毎極毎相の起電力は,それらコイルの起電力のフェーザ図上のベクトル和となる。

また,短節巻ではコイルの両コイル辺の起電力の位相差が電気角で π [rad] より小さいため,そのコイルの起電力は全節巻の場合より小さくなる。

その結果,分布巻・短節巻での誘導起電力は,集中巻・全節巻で得られる誘導起電力の値に,分布係数と短節係数との積である巻線係数を乗じた値となるが,誘導起電力の高調波が小さくなる利点がある。

同期発電機の電機子巻線の分布係数

ここでは,界磁磁束によって電機子巻線に発生する誘導起電力の波形に対する分布巻の効果を分布係数で説明する。

毎極毎相の導体を 1 個のスロットに納める集中巻に対して,何個かのスロットに分布して配置することを分布巻という。毎極毎相のスロット数を $q$ 個(整数とする)とすると,隣り合うコイルの誘導起電力はスロット間隔に対応した位相差を生じ,$q$ 個のコイルに発生する誘導起電力は各コイルの誘導起電力のベクトル和となる。

一方,集中巻の場合は 1 個のコイルの誘導起電力の大きさの $q$ 倍となる。

分布巻の場合の集中巻の場合に対する誘導起電力の大きさの比を分布係数という。

相数を $m$ として,基本波成分に対してはスロット間隔に対応して各コイルの位相差は電気角で $\displaystyle \alpha = \frac{\pi}{mq}$ [rad] となり,分布係数は $\displaystyle k_\text{d1}= \frac{\sin(\frac{\pi}{2m})}{q\sin(\frac{\pi}{2mq})}$ となる。

また,$v$ 次高調波成分に対してはスロット間隔に対応して隣り合うコイルの高調波誘導起電力の位相差は電気角で $\displaystyle v\alpha = \frac{v\pi}{mq}$ [rad] となるので,$v$ 次高調波誘導起電力に対する分布係数は $\displaystyle k_\text{dv}= \frac{\sin(\frac{v\pi}{2m})}{q\sin(\frac{v\pi}{2mq})}$ となる。

分布係数の値は,通常,基本波に対しては数パーセントの減少であるが,高調波に対しては大きな減少となり,誘導起電力の波形は正弦波に近づく。

参考文献

更新履歴

  • 2022年1月31日 新規作成
  • 2022年6月19日 参考文献に「平成30年度 第一種 電気主任技術者 一次試験 機械 問1」を追加