放射とは,電磁波あるいは粒子の形によって伝搬するエネルギーのことである。
電磁波の波長範囲は,10-16 ~ 108 m であり,その波長によって宇宙線,ガンマ線,X 線,紫外放射,可視放射(光),赤外放射,電波などに区分され,それぞれ特有の性質を持っている。
このうち人の目に入って,明るさの感覚を乗じさせる 380 ~ 780 nm の波長範囲を可視放射(光)という。
単位時間にある面を通過する放射エネルギーの量を放射束という。単位はワット [W] 又はジュール毎秒 [J/s] であり,物理量である。
放射束に明所視下における人の目の感度(分光視感効率)を乗じた量 $\Phi$ を光束といい,単位はルーメン [lm] である。
これは,物理量に人の目の感度を乗じた量であることから,心理物理量と呼ばれる。
また,この $\Phi$ は,ある放射体からの分光放射束を $\Phi_\text{e}(\lambda)$ [W/nm],標準分光視感効率を $V(\lambda)$ とすれば,次式より求まる。
\[ \Phi = K_\text{m}\int^{\lambda_2}_{\lambda_1} V(\lambda) \Phi_\text{e}(\lambda) \text{d}\lambda \]
ここで,$\lambda$ は波長 [nm],$\lambda_1$ から $\lambda_2$ までは可視放射(光)の波長範囲,$K_\text{m}$ は最大視感効果度であり,その値は約 555 nm において約 683 lm/W である。
明るさ
日常用語の "明るさ" は,非常に多様な意味をもち,文脈において対応する専門的概念が相当に異なっている。
事柄を正しく表すためには,用語を正しく使う必要がある。
光によって生じる "明るさ" は,学術的には「ある面から発している光の強弱の見え方の基礎になる視感覚の属性」と定義され,主として関連する測光量は輝度である。
すなわち,視対象における光の状態をいうのではなく,人が感じる効果(感覚量)を指している。
ある面の輝度は,その面のある方向への光度をその見かけの面積で割った値で与えられる。
この絶対値が一定であっても,"明るさ" は,目の順応状態,周囲との対比などの視覚条件によって異なってくる。
視覚条件が一定な状態において,面から発するある方向への光度が同じ値である場合には,面の見かけの面積が大きいときと比較して,小さいときには明るく感じられる。
また,どの方向から見ても面の輝度が等しく一様に見える面を均等拡散面という。薄曇りの空がその代表例である。
このような面は,その法線方向の光度 $I_\text{n}$ に対して $\theta$ 方向の光度 $I(\theta)$ は,
\[ I(\theta)=I_\text{n}\cos\theta \]
の関係があり,これをランベルトの余弦法則(Lambert's cosine law)という。
参考文献
更新履歴
- 2022年1月21日 新規作成