目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

三相変圧器における巻線の結線方式

三相変圧器巻線の結線方式(three phase connection)には Y 結線(星形結線)と,Δ 結線(三角結線)の 2 種類がある。

結線

星形結線

三相変圧器のそれぞれの相巻線または三相バンクを構成する単相変圧器の同一定格電圧の巻線の一端を共通点である中性点に接続し,他端をそれぞれの線路端子に接続した巻線接続をいう。

三角結線

三相変圧器のそれぞれの相巻線または三相バンクを構成する単相変圧器の同一定格電圧の巻線を閉回路を作るように直列接続した巻線接続をいう。

三角結線において三角の一つを閉じずに,開放端をそれぞれ端子に接続したものを開放三角結線という。

千鳥結線

位相が異なる電圧を誘導する二つの部分からなる三相変圧器のそれぞれの相巻線または三相バンクを構成する単相変圧器の同一定格電圧の巻線の一端を共通点である中性点に接続した巻線接続をいう。

スコット結線

三相,二相変換を行うための結線で,三相側回路の一相の線路に接続される巻線の一端が,他の二相の線路に接続される巻線の中点に接続され,両者の巻線の誘導電圧が互いに直角位相となるものをいう。

Y-Y 結線(星形星形結線)

Y-Y 結線(Y-Y connection, star-star connection)は,変圧器の一次側,二次側とも巻線を Y 結線とする方法である。

下図の三相変圧器巻線の Y-Y 結線において,U,V,W は高圧側,u,v,w は低圧側を示す。

図 三相変圧器巻線の Y-Y 結線

図 三相変圧器巻線の Y-Y 結線

この結線の特徴としては,中性点接地が採用できるので,巻線の絶縁低減が可能となること,事故検出に十分な地絡電流が流れ保護が容易となることが挙げられる。

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しかし Y-Y 結線では,変圧器の励磁電流に含まれる第 3 次調波による近接通信線への電磁誘導障害などが発生する。

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この第 3 次調波による障害を解決するために,三巻線変圧器を用いてその結線方式を Y-Y-Δ とすることにより第 3 次調波の影響を小さくすることができる。

この結線は超高圧の変圧器に広く適用されている。

その特徴は,異常電圧を低減でき,一次側,二次側に位相変位がないこと,および参事巻線を設けることで,① 第三調波を環流させ,各相電圧を正弦波にする,② 一次地絡時の零相電流を循環させ,変圧器の零相インピーダンスを減少させる,③ 調相設備や所内負荷などの回路に必要な低電圧を供給すること,などである。

Y-Δ 結線と Δ-Y 結線(星形三角結線と三角星形結線)

中低圧でよく使われる Y-Δ 結線(star-delta connection)と Δ-Y 結線(delta-star connection)は Δ 結線が励磁電流中の第 3 次調波成分の環流回路として働き,電流のひずみが小さくなる。

図 三相変圧器巻線の Y-Δ 結線

図 三相変圧器巻線の Y-Δ 結線

図 三相変圧器巻線の Δ-Y 結線

図 三相変圧器巻線の Δ-Y 結線

Y-Δ 結線と Δ-Y 結線は,励磁電流の第三調波は Δ の部分の循環電流として存在し,Y の部分では中性点接地ができるので,一次,二次の位相が 30 ° 変位する欠点があるにもかかわらず,送配電系統に普通に用いられる。

Y-Δ 結線を受電端に,Δ-Y 結線を送電端に用いると,高電圧側を Y で受け持つことになるから,絶縁の点で有利である。

Y-Δ 結線の例

定格容量 100 [kV・A],定格一次電圧 6 600 [V],定格二次電圧 200 [V],定格周波数 50 [Hz] の Y-Δ 結線の三相変圧器がある。

この変圧器を定格で使用したときの二次巻線の相電流は,167 [A] である。

一次電圧と二次電圧の位相差は π/6 [rad] である。

変圧器の励磁電流には,鉄心の非線形特性のために,高調波成分が含まれる。この内,電源周波数の 3 倍の周波数成分は,三つの相で同相であり,二次巻線で環流する。

この変圧器の二次端子に 2 [Ω] の抵抗器 3 台を星形結線で接続し,一次端子に定格電圧を印加した。

図 Y-Δ 結線の三相変圧器

図 Y-Δ 結線の三相変圧器

変圧器の短絡インピーダンス及び励磁電流を無視したとき,一次電流は,1.75 [A] となる。

この変圧器を同じ定格電圧の 60 [Hz] で使用することはできる。

Δ-Δ 結線(三角三角結線)

Δ-Δ 結線(delta-delta connection)は,第三調波を吸収できること,一次側,二次側間に位相変化がなく,1 台に故障を生じても V-V 結線で運転できる利点がある*1。日本では主として 77 kV 以下の変圧器に適用される。

図 三相変圧器巻線の Δ-Δ 結線

図 三相変圧器巻線の Δ-Δ 結線

欠点としては,Δ-Δ 結線では中性点接地が採用できないため,アーク地絡によって異常電圧が発生すること,地絡保護が困難で別に接地用変圧器を設ける必要があること,不平衡負荷の場合に巻線に流れる循環電流が大きくなることなどが挙げられる。

上記のような欠点があるため,Δ-Δ 結線は,主として 77 kV 以下の回路に使用される。

V 結線

三相電源に 2 個の変圧器を接続して三相電力を供給する結線を V 結線(V connection, open-delta connection)という。

Δ-Δ 結線の容量 $3VI$ に対して,V 結線の容量は $\sqrt{3}VI$ である。

図 三相変圧器巻線の V 結線

図 三相変圧器巻線の V 結線

変圧器を設置時の初期負荷が軽い場合,または,1 台の単相変圧器が故障したときの応急処置として用いられる。

利用率が $\sqrt{3}/2$(約 87 %),出力が \sqrt{3}/3(約 58 %)と低く,電圧降下も不平衡となるため常用されることは少ない。

T 結線

T 結線(T connection)は,三相結線としてはほとんど用いられない。

スコット結線(Scott connection)を用いれば,三相と二相との変換ができる。

図 スコット結線

図 スコット結線

主座巻線および T 座巻線

主座巻線とは,スコット結線の三相側巻線のうち,三相側回路の 2 相の線路間に接続される巻線をいう(図「スコット結線」における W-V 巻線)。

T 座巻線とは,スコット結線の三相側巻線のうち,三相側回路の 1 相の線路と主座巻線の中点との間に接続される巻線をいう(図「スコット結線における U-O 巻線」)。

 

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参考文献

更新履歴

  • 2022年1月20日 新規作成
  • 2022年1月22日 参考文献に「平成25年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問2」「平成23年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 機械 問3」を追加,参考文献に JEC-2200-2014「変圧器」を追加
  • 2022年7月7日 「変圧器のスコット結線」のリンクを追加
  • 2022年8月30日 参考文献のタイトルを追加
  • 2022年12月3日 星形結線,三角結線,千鳥結線,スコット結線の説明を追加

*1:独立した単巻変圧器 3 台による場合には,1 台の単相変圧器が故障しても健全な変圧器 2 台による V 結線として,最大出力は落ちるものの三相電力の伝達ができる