目指せ!電気主任技術者~解説ノート~

第一種電気主任技術者の免状保有者がまとめた電気主任技術者試験の解説ノートです。

水力発電所の種類~水路式発電所,ダム式発電所,ダム水路式発電所~

水力発電所を分類する。

落差を得る方法による分類

水路式発電所

水路式発電所(conduit type hydropower plant)*1は河川の水を取り入れ,比較的長い水路で発電所に導いて落差を得る方式であり,その主な設備としては,取水口,取水ダム,沈砂池*2,導水路,ヘッドタンク,水圧管,水車,発電機,放水路及び放水口からなる。

水路式発電所の主要な水の流れ

水路式発電所の主要な水の流れは次のとおりである。

取水ダム → 取水口 → 水路 → 沈砂池 → 水路 → 水槽 → 水圧管 → 水車 → 放水路 → 放水口

一方,ダム式,ダム水路式では,一般的に沈砂池の機能がダムに備わっていることから,沈砂池は不要とされている。

ダム水路式の導水路は,一般に圧力トンネルとなることから,水路式のヘッドタンクに変えて,サージタンクを設置する。

取水口

取水口はごみの流入を抑制する目的で河川と直角にとることが多い。また,取水ダムには排砂門を設け,洪水時などに取水口付近に堆積した土砂を排出する。

沈砂池

次に,取水した水は,沈砂池に入る。ダム式発電所と異なり,取水中の土砂は取水口で完全に除くことができないため,ここで,水の流れを緩やかにして,導水路に入るまで土砂を十分に沈殿させる。

導水路

導水路には,主に開きょや無圧トンネル*3が用いられる。

岩盤が堅固なところでは素掘りのままとする場合もあるが,多くはコンクリートなどで内面の巻立てを行う。

ヘッドタンク(head tank)

水路式発電所の場合,取水ダムで取水した水は,まず,ヘッドタンクに入る。

ヘッドタンクは,水圧管の手前に設けられ,水路末端の断面積を広げて容積を大きくしたものであり,最終的な土砂の沈殿や落葉などのごみの取り除きを行うほか,発電所負荷の急増時には水の補給を行うなどの機能を有する。また,負荷遮断等の負荷急減時に,水路から流入してくる水を河川に放出するための設備を余水吐けという。

サージタンク

サージタンクには,ヘッドタンクが有する出力変動に対する数分程度の水量供給変動を吸収する能力とは別に,水撃圧を吸収する能力がある。

水路式発電所の特徴

水路式発電所は河川の勾配を利用して落差を得る方法であり,その特徴は次のとおりである。

  • 取水ダムは小さくてよいので,ダムの建設費が少なく,万一ダムが決壊した場合でもその被害は小さくなる。
  • 年間の設備利用率が高く,ベース負荷に適している。
  • 発電量は河川流量に左右され,発電所の出力はダム式に比べ大きくできない。
  • 水車や発電機の停止時や洪水時には無効放流(発電しない放流)となる。
  • 長い水路,沈砂池,調整池,水槽などを設けなくてはならず,これらの設備の点検保守に手間がかかる。

ダム式発電所

ダム式発電所(dam type power plant)*4はダムの貯水位を利用して落差を得る方式である。

ダム水路式発電所

ダム水路式発電所(dam and conduit type power plant)*5は水路式発電所とダム式発電所の特性を合わせもつ方式である。

流量の利用方法による分類

流れ込み式発電所

河川の自然の流れをそのまま利用して発電する方式を流れ込み式発電という。

貯水池などを持たない水路式発電所がこれに相当する。

調整池式発電所

1 日又は数日程度の河川流量を調整できる大きさの池を持ち,電力需要が小さいときにその池に蓄え,電力需要が大きいときに放流して発電する方式を調整池式発電 (poundage type power plant) という。

日間調整は,夜間の軽負荷時に発電を停止して河水を貯え,昼間の重負荷時に,河川自流分に貯水分をあわせて発電に使用する。

週間調整では,休日の軽負荷時に貯水し,平日の重負荷期に発電するという運用を行う。

したがって,この種の発電所では,流れ込み式発電所に比べて最大使用水量と常時使用水量の比が大きく,設備利用率は低い。

なお,一般に季節間調整池式発電所は揚水式発電所と共に負荷追従性の最も優れた発電所であることから,系統上ピーク対応電源として位置づけられる。

貯水池式発電所

貯水池式発電所 (reciever type power plant) は,貯水池からの放流を発電に利用できる発電所で,放水期に貯水し,渇水期に放流する等長期にわたって,その河川の流量を調節できる。

したがって,日常の発電所の運用に際しても,弾力性に富んだ運転ができるので,ピーク用として運転に適する他,系統事故,負荷の急変等に備えるための運転予備力としても活用できる。 

図に示すように,放水地点の水面を基準面とすれば,基準面から貯水池の静水面までの高さ Hg [m] を一般に総落差という。

また,水路や水圧管の壁と水との摩擦によるエネルギー損失に相当する高さ h1 [m] を損失水頭という。さらに,Hg と h1 の差 H=Hg −h1 を一般に有効落差という。

今,$Q$ [m3/m] の水が水車に流れ込み,水車の効率を $\eta_\text{w}$ とすれば,水車出力 $P_\text{w}$ は $$9.8QH\eta_\text{w}$$ になる。

さらに,発電機の効率を $\eta_\text{g}$ とすれば,発電機出力 $P$ は $$9.8QH\eta_\text{w}\eta_\text{g}$$ になる。

ただし,重力加速度は 9.8 m/s2 とする。

図 貯水池式発電所

図 貯水池式発電所

揚水式発電所

揚水式発電所 (pumped storage hydro-power plant) は,発電所の上部・下部に貯水池(調整池)をもち,放水期あるいは深夜時の余剰電力で低所(下池)の水を高所(上池)に汲み上げて,この水を必要に応じて発電に利用する水力発電所をいう。

揚水式発電所はエネルギーロスの不利な面もあるが,kW 当たりの建設費が安い等ピーク供給力として優れているため,電源構成上の必要から開発が進められている。

ただし,揚水動力が無いと稼働できないため,その開発・運用計画には電力系統全体からみた大局的な判断が必要とされる。

上池に自然流入量があり,揚水分と自流分をあわせて発電する混合揚水式,上池に自然流入量が無く,揚水分のみで発電する純揚水式とがある。

貯水池(調整池)としては,ダム湖あるいは,天然湖沼が利用されているが,最近では下池として海を利用する海水揚水式も考えられている。

参考文献

  • 電気事業講座「電気事業辞典」
  • 令和7年度 下期 第三種 電気主任技術者試験 電力 問1「水力発電所の種類」
  • 令和5年度 下期 第三種 電気主任技術者試験 電力 問1「水力発電の理論式」
  • 令和3年度 第三種 電気主任技術者試験 電力 問1「水力発電所の種類」
  • 令和3年度 第三種 電気主任技術者試験 電力 問2「水圧管内の流速と水圧」
  • 令和2年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問5
  • 平成27年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問5
  • 平成17年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問1

更新履歴

  • 2021年11月3日 新規作成
  • 2021年11月14日 加除修正
  • 2021年12月12日 参考文献に「平成17年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問1」を追加
  • 2026年3月27日 参考文献に「令和7年度 下期 第三種 電気主任技術者 電力 問1」を追加,SEO・SNS 向け設定を追加
  • 2026年3月28日 参考文献に「令和5年度 下期 第三種 電気主任技術者試験 電力 問1」を追加
  • 2026年4月10日 参考文献に「令和3年度 第三種 電気主任技術者試験 電力 問1」「令和3年度 第三種 電気主任技術者試験 電力 問2」を追加

*1:河川勾配に比べて緩勾配の水路を設けて導水することにより,落差を得る方式の水力発電所で,できるだけ短い水路延長で大きい落差が得られる場合に有利となる。したがって一般に勾配が急であって,かつ屈曲の多い河川の中・上流部に設けられることが多い。(出典)電気事業講座 電気事業辞典

*2:河川水には常に多少の土砂が浮遊しており,とくに出水時には,その濃度が非常に大きくなる。この水をそのまま水路・水車に通すと,水路内に土砂が堆積あるいは水路壁の摩耗,水車の摩耗・損傷が生じるので,水路の入り口で浮遊土砂を沈殿させ除去する必要がある。このための設備を沈砂池という。

*3:無圧トンネルは自由水面を有する水路,圧力トンネルは水路内に圧力が働いており管水路の状態となる。

*4:河川を横断してダムを築造することにより推移を高め,落差を得る方式で,できるだけ小規模なダムで,できるだけ大きい貯水容量が得られる場合が有利となり,一般的に勾配が緩やかで,流量豊富な河川の中・下流部に設けられることが多い。しかし時には河川流量の既設的な変動を年間を通じて平均化する目的で,河川の最上流部に大規模な貯水池を設ける場合に,貯水池からの放流を利用してダム式発電所を設けることもある。(出典)電気事業講座 電気事業辞典

*5:水路式発電所およびダム式発電所を組み合わせた発電所形式で,河川勾配の緩やかな所にダムを築造して水をせき止め,ダム下流の急流部または屈曲部の落差を,水路を延長することによって利用する方式。したがって一般に河川の上・中流部に設けられることが多い。(出典)電気事業講座 電気事業辞典