水路式発電所(conduit type hydropower plant)*1は河川の水を取り入れ,比較的長い水路で発電所に導いて落差を得る方式であり,その主な設備としては,取水口,取水ダム,沈砂池*2,導水路,ヘッドタンク,水圧管,水車,発電機,放水路及び放水口からなる。
ダム式発電所(dam type power plant)*3はダムの貯水位を利用して落差を得る方式である。
また,ダム水路式発電所(dam and conduit type power plant)*4は水路式発電所とダム式発電所の特性を合わせもつ方式である。
水の流れ
水路式発電所の主要な水の流れは次のとおりである。
取水ダム → 取水口 → 水路 → 沈砂池 → 水路 → 水槽 → 水圧管 → 水車 → 放水路 → 放水口
一方,ダム式,ダム水路式では,一般的に沈砂池の機能がダムに備わっていることから,沈砂池は不要とされている。
ダム水路式の導水路は,一般に圧力トンネルとなることから,水路式のヘッドタンクに変えて,サージタンクを設置する。
水路式発電所の特徴
水路式発電所は河川の勾配を利用して落差を得る方法であり,その特徴は次のとおりである。
- 取水ダムは小さくてよいので,ダムの建設費が少なく,万一ダムが決壊した場合でもその被害は小さくなる。
- 年間の設備利用率が高く,ベース負荷に適している。
- 発電量は河川流量に左右され,発電所の出力はダム式に比べ大きくできない。
- 水車や発電機の停止時や洪水時には無効放流(発電しない放流)となる。
- 長い水路,沈砂池,調整池,水槽などを設けなくてはならず,これらの設備の点検保守に手間がかかる。
主な設備
取水口
取水口はごみの流入を抑制する目的で河川と直角にとることが多い。また,取水ダムには排砂門を設け,洪水時などに取水口付近に堆積した土砂を排出する。
沈砂池
次に,取水した水は,沈砂池に入る。ダム式発電所と異なり,取水中の土砂は取水口で完全に除くことができないため,ここで,水の流れを緩やかにして,導水路に入るまで土砂を十分に沈殿させる。
導水路
導水路には,主に開きょや無圧トンネル*5が用いられる。
岩盤が堅固なところでは素掘りのままとする場合もあるが,多くはコンクリートなどで内面の巻立てを行う。
ヘッドタンク(head tank)
水路式発電所の場合,取水ダムで取水した水は,まず,ヘッドタンクに入る。
ヘッドタンクは,水圧管の手前に設けられ,水路末端の断面積を広げて容積を大きくしたものであり,最終的な土砂の沈殿や落葉などのごみの取り除きを行うほか,発電所負荷の急増時には水の補給を行うなどの機能を有する。また,負荷遮断等の負荷急減時に,水路から流入してくる水を河川に放出するための設備を余水吐けという。
サージタンク
サージタンクには,ヘッドタンクが有する出力変動に対する数分程度の水量供給変動を吸収する能力とは別に,水撃圧を吸収する能力がある。
参考文献
更新履歴
- 2021年11月3日 新規作成
- 2021年11月14日 加除修正
- 2021年12月12日 参考文献に「平成17年度 第二種 電気主任技術者 一次試験 電力 問1」を追加
*1:河川勾配に比べて緩勾配の水路を設けて導水することにより,落差を得る方式の水力発電所で,できるだけ短い水路延長で大きい落差が得られる場合に有利となる。したがって一般に勾配が急であって,かつ屈曲の多い河川の中・上流部に設けられることが多い。(出典)電気事業講座 電気事業辞典
*2:河川水には常に多少の土砂が浮遊しており,とくに出水時には,その濃度が非常に大きくなる。この水をそのまま水路・水車に通すと,水路内に土砂が堆積あるいは水路壁の摩耗,水車の摩耗・損傷が生じるので,水路の入り口で浮遊土砂を沈殿させ除去する必要がある。このための設備を沈砂池という。
*3:河川を横断してダムを築造することにより推移を高め,落差を得る方式で,できるだけ小規模なダムで,できるだけ大きい貯水容量が得られる場合が有利となり,一般的に勾配が緩やかで,流量豊富な河川の中・下流部に設けられることが多い。しかし時には河川流量の既設的な変動を年間を通じて平均化する目的で,河川の最上流部に大規模な貯水池を設ける場合に,貯水池からの放流を利用してダム式発電所を設けることもある。(出典)電気事業講座 電気事業辞典
*4:水路式発電所およびダム式発電所を組み合わせた発電所形式で,河川勾配の緩やかな所にダムを築造して水をせき止め,ダム下流の急流部または屈曲部の落差を,水路を延長することによって利用する方式。したがって一般に河川の上・中流部に設けられることが多い。(出典)電気事業講座 電気事業辞典
*5:無圧トンネルは自由水面を有する水路,圧力トンネルは水路内に圧力が働いており管水路の状態となる。